nitto kogyo

1+1は「2以上」。
開発2部署の連携で 「世の中を変える」製品ができた。

MEMBER

高橋 良太RYOTA TAKAHASHI

機器開発部 第一グループ課長
1993年入社
工学部 電子工学科 卒

片岡 賢司KENJI KATAOKA

機器開発部 第一グループ主査
2004年入社
工学部 電子工学科 卒

浅野 太郎TARO ASANO

配電盤開発部 第一グループ課長
1997年入社
工学部 電気情報工学科 卒

宮山 将SHO MIYAYAMA

配電盤開発部 第一グループ
2010年入社
工学部 電気情報工学科 卒

#1
約40年間変わることのなかった、
ブレーカの小型化に着手

動力分電盤とは、工場や店舗などで使われている動力(三相)機器に電源を送るためのブレーカや制御装置などを収容した分電盤のこと。この動力分電盤に搭載されるブレーカは、約40年もの間、サイズに変更がない。「市場ニーズが強くないものの、コンパクト化のニーズは将来的に必ず到来する」と、日東工業内に2014年、小型動力分電盤「アイセーバコンパクト」の開発プロジェクトが立ち上がった。

「急速に需要が高まっていた太陽光発電市場の伸びが落ち着き始めた時期で、次に来る事業を模索していました。さらに、2020年の東京オリンピックに向けて店舗やインフラ整備も進むだろうと考えました。動力分電盤のコンパクト化に取り組むことで、特に店舗市場での形勢を一変させたいという思いがありました」(機器開発部 高橋)

「例えばコンビニでコーヒーやドーナツのサービスが始まったように、店舗では多様なサービスをするようになり店舗内で使う機器が増え、店舗内のスペース確保が課題になっています。実際、店舗で使用されるお客様からは『動力分電盤を小型化してほしい』というニーズの芽が出始めていました」(配電盤開発部 宮山)

こうして、小型ブレーカの開発を担当する「機器開発部」と、そのブレーカを収容して動力分電盤として完成させる「配電盤開発部」という2つの部署がタッグを組み、新たな挑戦が始まった。

「日東工業はブレーカというパーツと、それらを組み合わせた分電盤の両方手掛けていることが強みです。ベストな組み合わせを追求し、市場の形勢を逆転したいと思いました」(配電盤開発部 浅野)

#2
社内での意見の違い。
よし、顧客の声を聞こう!

「アイセーバコンパクト」の船出は、順調とはいかなかった。最初の壁は、製品の軸を決める企画段階。開発プロジェクトは「従来品のシェアを新製品が奪っては意味がない」と考え、「苦手市場に切り込むための機種追加」という企画を提案したところ、社内からは「従来の製品はすべて新製品にモデルチェンジして、市場にイノベーションを起こす」という大胆な意見も出た。実際のお客様はどちらを望むのか? 開発と営業とが再度お客様の声を聞きに行くことにした。

「営業に同行し、十数社訪問しました。お客様に『コンパクトな動力分電盤へのニーズは?』『でも従来品がなくなってしまったら?』という質問をストレートにぶつけました。すると、お客様からは『40年も使っている機器を、いきなり全部変えられても市場が混乱する』という声が予想以上に多かったのです。機種追加という位置づけが市場とマッチしていることを実感できました」(機器開発部 片岡)

顧客のリアルな声を裏付けとし、あらためて「製品の早期立ち上げを目指し、顧客の反応を見ながら次の段階へ移行する」という方向性が明確になった。

#3
コンパクト、だけではダメだ!

プロジェクトはいよいよ製品開発の段階へ。しかしクリアすべき課題は山積みだった。

「性能・品質・コスト・安全性・施工性・利便性・生産性。どれもないがしろにせず、むしろ性能アップを目指さなくてはいけません。機器開発部が担当するブレーカの設計では、3D造形での試作、強度解析、施工性・生産性のモニタリングを繰り返しました」(高橋)

「サイズを小さくすることで、安全性を確保するための絶縁距離が取れない、製造時に小さくて組み立てにくい、施工時には従来の電線サイズが入らないなどの課題が出てきます。無理難題ばかりでしたね」(片岡)

「『アイセーバコンパクト』という製品としての性能や安全性を確保する必要があります。分電盤の温度上昇試験など規格をクリアするため、試行錯誤を重ねました」(浅野)

「お客様からは、既存の配線をそのまま生かし、盤だけリニューアルしたいという要望が多いんです。10年前の動力分電盤との“互換性”を追求するのは、やはり大変でしたね」(宮山)

機器開発部が生み出した「ブレーカ」がコンパクトで優秀であっても、「動力分電盤」としての性能や使い勝手を満たさなければ、お客様には受け入れてもらえない。配電盤開発部から機器開発部へ、設計のやり直しを依頼することも多かった。しかし、双方で密にコミュニケーションを取り、切磋琢磨することで、『1+1は2以上』の力が発揮できたという。

ようやく納得のいく試作品が完成し、「アイセーバコンパクト」はタイのグループ会社で半年にわたる量産試作にのぞんだ。片岡をはじめ、ブレーカ設計メンバーはタイへ出向き、組立・品質指導に徹し、量産化への道筋をつけていった。

#4
JECA FAIR2016で受賞。
正直ホッとした

約40年変わることのなかったブレーカのサイズを一新し、従来の動力分電盤から「最大約30%の小型化」に成功した「アイセーバコンパクト」。この強いインパクトを世間に知らしめる絶好の機会として、電気設備に関する日本最大の総合展示会「JECA FAIR2016」でお披露目することにした。日東工業の期待を一身に背負った同製品は、「製品コンクール入賞」という使命を受けることになった。

「受賞できれば、そのPR効果は絶大です。そこで営業企画部と連携し、製品の見せ方、プレゼン方法、パンフレットの構成までこだわり抜きました」(高橋)

「そのおかげか、ブースの前を一度は通り過ぎた審査員の方が、『日東工業さんの製品は評判がいい』と戻ってきてくれることも多く、手応えを感じましたね」(浅野)

ステージのプレゼンターは宮山が担当。MCを頼まずに開発者自らプレゼンすることで、熱い想いを伝えたかったからだ。ここでは「顧客の質問に答える」という手法を活用。お客様の声を、開発のみならず、プレゼンにも生かしたのだ。

ついに結果発表の時。「アイセーバコンパクト」は、「経済産業大臣賞」に輝いた。この賞は製品に革新性があり優秀と認められた大変栄誉ある賞であり、業界に大きくアピールすることができた。

2016年10月21日。コンクールでの評価を掲げ、「アイセーバコンパクト」は新発売の日を迎えた。今後はシェア拡大に向けて、開発メンバーも顧客の元へ足を運び、製品PRに一層力を入れていく。そこでさらにヒアリングし、次の改良へつなげていくことは言うまでもない。製品の完成が、ゴールではない。「アイセーバコンパクト」のプロジェクト第2章に向けて、今日も貪欲な挑戦が続いている。

PRODUCT

協約形プラグイン小型動力分電盤「アイセーバコンパクト」とは?

従来の動力分電盤から、最大約30%小型化。約40年間変わることのなかったJIS協約形3Pブレーカのヨコ幅サイズを3分の2に落とし、動力分電盤の小型化を実現した。同容量の分電盤がこれまでより省スペースで設置できるため、小規模店舗への設置がスムーズに。また既存の盤を「アイセーバコンパクト」に変えれば、空いたスペースにIoT(モノのインターネット)やエネルギーマネジメント機器等を搭載でき、次世代のニーズにも対応可能である。