IPコード(IP保護等級)とは

目次

IPコードとは

IP(International Protection)コードとは

国際的な標準化団体であるIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)の中の規定の一つ、筐体(エンクロージャ)による保護等級(Degrees of protection provided by enclosures(IP Code)/IEC60529)にて、筐体内の機械・器具などの対象に対し、人体の接近保護、塵などの外来固形物や液体の侵入保護を等級化しました。日本では、このIEC60529を元にして、2003年に日本産業規格(旧:日本工業規格)(JIS C 0920):「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」が改定されました。
この改定によって、国際電気標準会議にて標準化されている保護等級(IEC 60529)と統一化が図られ、これまで使用されていたJIS保護等級(日本産業規格で制定)の規定は置き換えられました。ただし、旧JIS規格もIEC規定を基本に策定されているため、検査手順など細かい点で差異はあるものの大枠では同一のものとされています。
ちなみに、海外ではIPコードを国際規格であるIEC規定に従い、侵入保護等級(Ingress Protection Rating(Code))の略称を用いて「IP」とする場合が多いようです。
他に筐体内の塵や水などの侵入保護を表すものとして、NEMA(National Electrical Manufacturers Association: 米国)が制定した規格の一つ、NEMA 250「Enclosure for Electrical Equipment(1000V Maximum)があります。
日本産業規格(JIS C 0920)よりIPコードの説明を抜粋すると、「外郭(※)による、危険な箇所の接近、外来固形物の侵入、水の浸入に対する保護等級およびそれらの付加的事項などをコード化して表すシステム。」と記載しています。
(※.外郭とはある種の外部からの影響に対して、内部の電気機器を保護する部分であり、また、あらゆる方向からの直接接触(人または家畜の充電部への接触)に対して保護するために設けられた部分」と記載されています。)
要約すると、IPコードとは筐体(電気機器を覆うもの)への保護を等級により視覚的に表したものです。この等級を製品に表記する場合は規定に書かれている試験条件に適合しなければなりません。

IPコードの構成

IPコードの見方

IPコードは、上記書式で表されます。
第一特性数字は、防塵(器具に対する保護の内容 外来固形物の侵入・人体に対する保護の内容 危険な部分への接近に対する保護等級)、第二特性数字は、防水(器具に対する保護の内容 水の浸入に対する保護等級)を表します。
付加特性文字、補助文字は必須ではなく、オプションの為、省略が可能です。
それぞれの数字・文字の内容詳細を下記で説明します。

第一特性数字

危険な箇所への接近および外来固形物に対する保護等級を0~6段階までの数字または文字で示します。        
外来固形物とは主に塵(ごみ・ほこり)などを指します。
第一特性数字は、次の2つの条件のどちらにも適合する等級を数字で示します。
(1) 電気機械器具の外郭、人体の一部または人が所持する工具などの侵入を防ぐかまたは制限して、人の危険な箇所への接近に対して保護する。
(2)電気機械器具の外郭、外郭内の電気機器を外来固形物の侵入から保護する。 
 要するに、第一特性数字では防塵性能と人体に対して保護がどのくらいあるか試験を行い数字で表します。

第二特性数字

水の浸入による電気機器への有害な環境に対する外郭の保護等級を「0~8」段階までの数字または文字「X」で示します。
要するに、水の浸入をどれくらい防ぐことができるか試験を行い数字で表します。第二特性数字の試験は、真水(flesh water)を使用して行いますので、高水圧または溶剤を使用して洗浄を行う場合には、保護が不十分になる場合がありますので注意が必要です。

付加特性文字

危険な箇所への接近に対する保護等級を「A、B、C、D」で示します。
第一特性数字の人体の危険な箇所への保護と同じ内容ですが使用するためには下記2つの条件を満たす必要があります。                  
(1) 危険な箇所の接近に対する保護が、第一特性数字で示されている等級より上位の場合です。
(2) 危険な箇所の接近に対する保護だけを表示する場合で、第一特性数字が”X” で示される場合です。

補助文字

個別製品規格において、第二特性数字または付加文字の後に補助文字によって補助的な情報を示すことが可能です。    
補助文字としては、「H、M、S、W」 がすでに指定されています。
個別製品規格で試験及び適合条件を明確に示していれば、この上記4つの補助文字以外も使用可能です。

IPコードの例

<例1> IP67

第一特性数字「6」は、危険な箇所へ接近に対する保護等級で、「直径1.0㎜の近接プローブ(※)が侵入してはならない。」
(※近接プローブとは:人体の一部、又は人が保持する工具などを模擬したもの)
加えて、外来固形物に対する保護等級(外部内の電気機器に対する保護の内容)は「じんあいの侵入があってはならない。」とあります。
第二特性数字「7」は、「規定の圧力及び時間で外郭を一時的に水中に沈めたとき、有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。」

<例2> IPX3

第一特性数字「X」は等級の表記が省略されたことを表しています。製品に第一特性数字を表記する必要がない場合、省略値として「X」を使用します。
第二特性数字「3」の意味は、「鉛直から両側に60度までの角度で噴霧した水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。」
スマートフォンなどで防水規格は「IPX○」のように扱われますが、この第一特性数字「X」は無保護「0」とは異なり、その特性について表示(数字表記)はしないことを表しています。無保護「0」とは異なり、数字表記をしないだけであり、なんらかの保護がある可能性があります。

<例3> IP3X

第一特性数字「3」は、「直径2.5㎜の近接プローブ(※)が侵入してはなない。」
(※近接プローブとは:人体の一部、又は人が保持する工具などを模擬したもの)
加えて”外来固形物に対する保護等級(外部内の電気機器に対する保護の内容)”第一特性数字「3」は「直径2.5㎜の固形物プローブ(※)が全く侵入してはならない。」
(※固形物プローブとは:外来固形物(塵など)を模擬したもの)
第ニ特性数字「X」は、無保護「0」とは異なり、数字表記をしないだけであり、なんらかの保護がある可能性があります。

<例4> IP2XD

第一特性数字「2」の危険な箇所へ接近に対する保護等級は、「直径12㎜、長さ80㎜の関節付きテストフィンガ(※)の先端と危険な箇所との間に適正な空間距離を確保している。」
(※、関節付きテストフィンガとは人の指を模擬した器具です。)
加えて、外来固形物に対する保護等級(外部内の電気機器に対する保護の内容)は「直径12.5mmの球状の、固形物プローブの全体が侵入してはならない。」

第ニ特性数字「X」は、無保護「0」とは異なり、数字表記をしないだけであり、なんらかの保護がある可能性があります。
付加特性文字「D」は、人体の危険な箇所への接近に対する保護等級を示します。

「D」を表記する理由は、第一特性数字の条件である「指での危険な箇所への接近」の指よりも細い針金(直径1.0㎜)の接近に対して保護していることを表しています。

<例5> IP00

第一・第二特性数字「0」は、無保護かつ試験を行なっていないことを表しています。
無保護である「0」を表記する理由としては、製品に防塵・防水や危険の保護がないことを注意喚起したい場合が考えられます。

<例6> IPXXD

第一・第二特性数字「X」は、無保護「0」とは異なり、数字表記をしないだけであり、なんらかの保護がある可能性があります。
「XX」は防塵と防水性能を省略していますが、付加特性文字「D」によって、人体の一部又は人が手に持ったもの(針金1.0㎜)の危険な箇所への接近による保護があることを表しています。

<例7> IP23S

第一特性数字「2」は上記の「IP2XD」と同じです。
第二特性数字「3」は上記の「IPX3」と同じです。
数字「23」は、直径12.5㎜以上の外来固形物が製品の内部に入らないような設計構造と散水に対しての保護になります。
補助文字「S」は、回転機のロータなどの可動部分を停止させた状態で、水の浸入による有害な影響の試験に適合したことを表しています。

※IPコードの説明は「JIS C 0920」を参考に作成しています。

近接ブローブの実際の画像

IPコードのまとめ

IPコードの数字の意味や見方を理解しておくと、携帯電話、デジタルカメラ、防災ラジオ、イヤホンなどを使用する際「雨にぬれてもいいのか。水で洗ってもいいか。」という判断材料にもなります。
また、IPコードを正しく知ることにより、使用方法の誤りや故障などのリスクが減らせます。
今後は、使用用途や目的にあわせたIPコードの製品を選びましょう。

IPコード一覧

WPコード(風雨等級)について

キャビネットの防水性能は、上記のようにIP試験(防塵・防水試験)により、雨や噴流水に対する性能評価のみ行われます。
日東工業では、「風」と「雨」という複合条件での評価する風雨性能基準を制定しました。
この評価基準は、風雨性能を記号(WPコード)で表しています。
WPコードを見ることで、お客様は必要とする風雨性能を持つ製品を容易に選定できるようになりました。